手術は病気を治すという利益のために、身体にある程度負担“侵襲”をかけながら行う治療ですが、現在では身体の負担が少ない手術“低侵襲手術”を行うため様々な工夫がなされています。
手術支援ロボットda Vinci(ダヴィンチ)を用いた手術
手術支援ロボットda Vinci(ダヴィンチ)
手術支援ロボットda Vinci(ダヴィンチ)は、元々戦場における遠隔手術を目的に開発されましたが、その優れた特徴は手術の更なる低侵襲化に貢献できると期待されています。
ダヴィンチを用いた手術(以下ダヴィンチ手術)では、胸腔鏡手術と同様に数か所の創から手術を行いますが、大きな特徴は映像と執刀医の手の代わりとなるロボットアームにあります。
執刀医はコンソールと言われる操作台を通して、精細な拡大された3Dモニターを見ながら、手が入らないような狭いスペースで、人間の手よりも自由度が高く精密な動きが可能となる多関節ロボットアームの先端を活かして手術操作を行います。
このような利点を活かしたダヴィンチ手術は、従来の手術に比べて術中の出血量が減少し、回復が早いといわれています。その結果、機能の温存や入院期間の短縮といった患者さんへの負担の軽減、安全性の向上が期待されます。

手術風景

操作台でダヴィンチを操作
当科では、従来より年間約150例の全身麻酔手術の90%以上を胸腔鏡下手術で行っていますが、更なる低侵襲手術を目指すため、ダヴィンチ手術の学会認定指導医(プロクタ-)・専門医資格を持つ吉田(現呼吸器外科部長)の当院への赴任に伴い、保険適用となる前の平成29年11月よりダヴィンチ手術を開始いたしました。
平成30年度の診療報酬改定により、ダヴィンチを用いた「縦隔悪性腫瘍」「縦隔良性腫瘍」「肺悪性腫瘍」に対する手術が保険で行えるようになりましたが、そのためには一定の基準を満たさなければいけません。
当院はダヴィンチを用いた呼吸器外科手術では全国でも有数の施設であり、保険適用となるために必要な施設基準を長野県内で初めて取得しました。
保険適応となるのは肺がん、縦隔腫瘍に対する手術ですが、現在までに呼吸器外科チーム全員がダヴィンチ手術を行える資格を取得し、トレーニングを積んだ手術スタッフと共に順調に症例を重ねています。
胸腔鏡手術
内視鏡を用いた鏡視下手術は低侵襲手術の代表格とも言え、当科で行われる手術のほとんどが鏡視下手術です。
胸腔鏡手術とは胸部で行う鏡視下手術のことで、専用の手術機器を使って、全身麻酔下に1㎝-3㎝の数か所の創で手術を行います。