TAVIの治療には様々な診療科が協力治療にあたる『ハートチーム』が結成されます。各専門分野(循環器科、心臓血管外科、麻酔科医、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、診療放射線技師、リハビリ、栄養士)の知識、経験により、患者さんに一番良い治療を選択し、術後管理までその全てのプロセスを『ハートチーム』で行います。

筒井 洋 チームリーダー
経カテーテル的大動脈弁留置術の導入は、大和眞史院長の肝いりで2013年から導入準備を開始したプロジェクトでした。多くのスタッフの協力を得て2016年5月に施設認定を受け、8月末から治療を開始しております。現在月2~3例のペースで患者さんに治療を行い、これまで、60名弱の患者さんに治療を行いました。残念ながらお一人術後の感染症によりお亡くなりになりました。この事例を受け、術後の抗生剤投与をハートチームチーム内で再検討する等、より良い治療を目指して日々努力を続けております。
治療後の患者さんを診察して感じることは“目に見えて元気になる”ということです。治療後の回復の速さにも驚きましたが、心不全で入退院を繰り返していた85歳の患者さんが退院後お化粧をして外来に来られたのにはびっくりしました。
このTAVI治療については患者さんへの治療負荷が小さい画期的な治療であることを、スタッフ一同実感しております。最近では近隣の医療施設はもとより長野県中信地域からも患者さんの紹介を頂いております。今後も安全にTAVI治療を実施できるよう、関係スタッフは日々研鑽を積み努力しいく所存です。
80歳を超えて大動脈弁狭窄症のため生活が制限されていたり、苦しい思いをされている患者さんにとってTAVIは最適な治療法です。大動脈弁を人工弁に変えなければ良くならない、しかし年齢や体力のこともあり本格的な外科手術は難しそうという方は一度主治医の先生にご相談いただき、当院を受診してみてください。

循環器内科部長
川口 政徳
私は、TAVI専門外来、術前評価・治療方法の立案、入院中の管理を担当させて頂いております。実際の手技は、筒井チームリーダーのもと、河野部長(心臓血管外科)、私と毛原先生(心臓血管外科)の4人で担当させて頂いております。
TAVIは外科的大動脈弁置換術と違い、低侵襲というメリットがある反面、カテーテルによる遠隔操作で人工弁を植え込むため、たった数ミリの弁のサイズ、植え込み位置の違いが患者様の運命を大きく変えてしまいます。このため、術前の全身状態や併存疾患の評価、個々の患者さんの詳細な解剖学的特徴の把握、起きうるあらゆる合併症を予測しその対応策を練っておくことが極めて重要です。この過程に一切の妥協は許されません。
ハートチームでさまざまな専門的観点から意見を出し合い入念にディスカッションした後、全員一致団結して治療を行っています。皆さんが少しでも安心してこの治療を受けて頂けるように、何度でも、どんな些細な質問にも丁寧にお答えしたいと思っております。さまざまな理由で大動脈弁狭窄症の手術をあきらめていた患者様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

麻酔科部長
池野 重雄
麻酔科医の役割は、眠り薬を注射することだけとお考えの方も多いかと思います。しかし、実際には、手術中の呼吸や血圧などを調整して、手術中の患者さんの安全を確保することも麻酔科医の役割です。TAVI治療は、心臓に病気をお持ちの方々に対し行われる治療法であり、また、カテーテル操作が心臓の付近であることから、この時の麻酔には繊細さと高い技術が必要となります。言ってみれば、麻酔科医の腕の見せ所であり晴れ舞台なので、かねてから安全で良質な麻酔管理を目指して、トレーニングや学習を行なってきました。その結果、現在、周術期経食道心エコー認定資格者2名および心臓血管麻酔専門医1名を擁するようになりました。
今後も、患者さんに安心してTAVI治療を受けていただくためにより安全で良質な麻酔を提供できるよう、たゆまぬ研鑽を行なっていく所存です。
ハートチームのメンバー