大きく3つの業務に分けられ、(1)病理組織診断(2)細胞診(3)病理解剖を行っています。
(1)病理組織診断
①生検材料
臨床医は内視鏡(胃カメラなど)や超音波などの画像を見ながら、鉗子や針などを使って患者さんの病変部から組織の一部を採取します(生検という)。
この組織は病理部の臨床検査技師により処理され、特殊な機器を使い薄切(数ミクロンの厚さに薄くスライス)され、プレパラートというガラスに貼り付け、観察しやすいように染色し標本を作製します。
この標本を病理医が顕微鏡で観察し、病変の組織診断を行います。
腫瘍かどうか、良性か悪性かの診断が多いですが、炎症などの病変も含まれます。
これが確定診断となり、患者さんの治療方針(手術や化学療法、放射線療法など)が決定します。
生検組織は人体のほとんどの部位から採取できます。
内科領域(胃、大腸、膵管、胆管、肝、腎、気管支、肺、骨髄など)、外科領域(乳腺、甲状腺、表在リンパ節など)、皮膚科領域(皮膚の一部)、婦人科領域(子宮頸部、子宮体部など)、泌尿器科領域(前立腺、膀胱、尿管など)、耳鼻科領域(口腔、鼻腔、唾液腺、頸部リンパ節など)、脳外科領域(下垂体、脳など)が対象となります。
②術中迅速診断
患者さんの手術中に病理組織診断を行うものです。
上記のような通常の標本作製は時間がかかる(2~4日)ため、別の方法を使って10~15分程度で標本を作製します。
対象となるのは、胃がん、膵がん、肺がん、乳がんなどの手術で断端(切除された臓器の一番外側の部分)にがん細胞が存在していないか、リンパ節に転移がないか、また手術前に良性か悪性かわかっていない腫瘍の手術の場合などに、手術中に組織を顕微鏡でみて診断をします。
診断した情報は病理医から執刀医に伝えられ、術式(切除する臓器の範囲)の決定などに役立っています。
③手術材料
手術により患者さんから摘出された臓器は、病理診断科において詳細に調べられます。
病理医はまず肉眼的に摘出臓器を観察し、病変の拡がりや位置関係を確認しながら切り出し(必要な部分を切り分ける)を行います。
この組織片は生検材料と同様に処理され標本が作製されます。病理医は顕微鏡で標本を観察し、病変の本態(がんか炎症かなど)、がんであれば浸潤などの拡がり、リンパ節への転移などを把握して進行程度や断端にがんがないかどうかについて診断を下します。

正常の胃の組織

胃がんの組織
(2)細胞診
組織診断と同様に患者さんから採取された細胞を顕微鏡でみて判定をしています。
この判定は臨床検査技師(細胞検査士)がまず行い、異常がある細胞(悪性が疑わしい細胞)がみられる場合には、病理医がさらに顕微鏡で確認して臨床に報告されます。
一般的に、組織の採取は患者さんの負担が大きいのに対し、細胞の採取は低侵襲である(体を傷つけることが少ない)ことが特徴ですが、得られる情報も少ないため判定が難しいことがあります。
対象は婦人科領域の健診が多く、子宮の入り口や子宮内をブラシなどで擦って細胞を採り、プレパラートに塗り広げ、観察しやすいように染色します。
これを顕微鏡で観察してがん細胞がないかを調べています。その他にも、喀痰や尿などの中にがん細胞がないか、また乳腺や甲状腺などにしこりがある場合、このしこりに針を刺して細胞を採取し、しこりが悪性腫瘍か良性腫瘍かを判定することも行っています。

正常の乳腺の細胞

乳癌の細胞
(3)病理解剖
不幸にして患者さんが亡くなられた場合、御遺族の承諾を頂いたうえで、主に直接死因の究明を目的に解剖が行われます。
生前の臨床診断の確認、治療効果の判定、合併症などについても調べます。
病理解剖は御遺族の御好意・善意により成り立つもので、得られた情報は主治医をはじめとする医療従事者にとって、疾患の理解や適切な治療法などの参考になるきわめて貴重なものです。
生前の臨床経過と解剖結果とを突き合わせて行う検討会も定期的に開催され、若い研修医の勉強の場となっています。
解剖をお許し頂いた御遺族の皆様には改めて厚く御礼申し上げます。なお、御遺族の皆様への御礼と亡くなられた方々の御冥福をお祈りする解剖慰霊祭も定期的に開催されています。

標本作製室の様子

鏡検室の様子

病理組織標本作成の様子