諏訪赤十字病院 Quality Indicator
臨床指標検討部会
丸山 起誉幸
患者、医療提供者の立場を問わず、質の高い医療を望むのは当然であり、全国的に臨床指標(Quality Indicator:QI)に対する医療者の関心が高まっています1)。厚生労働省は全国に先駆け、2010年度に医療の質の評価・公表等推進事業を始めました。その事業に参加するかたちで、日本病院会や国立病院機構などの病院団体や機構がQI事業を具体的に開始しました。日本赤十字社においても2013年から本事業に着手し、国立病院機構に準じた指標(15項目)や赤十字社独自の指標(2項目)について集計を開始しています。当院においては、2013年より日本赤十字社と日本病院会のQIプロジェクトに参加するかたちで、当院における「医療の質の評価」を開始しました。
医療の質の定義として、「個人や集団を対象に行われる医療が望ましい健康状態をもたらす可能性の高さ、その時々の専門性に合致している度合い」2)が世界的に広く受け入れられています。つまり、医療の質の評価とは、「根拠に基づいた医療(Evidence-based Medicine;EBM)」に則った医療をどれくらい行っているかを評価するものといえます。EBMとは、信頼性(エビデンス・レベル)の高い研究成果(論文)を根拠とした医療であり、EBMに則った医療とは、「診療上のテーマごとに、最も高いレベルのエビデンスを知ったうえで医療を行うこと」といえます。
1990年代以降、EBMの考え方が普及し、さまざまな疾患について診療ガイドラインが作成され、エビデンスに基づいた医療が推奨されるようになりました。しかしながら、地域性や医療現場の状況(医師の経験や医療施設の特性)、患者特有の病状や意向などにより必ずしもガイドラインに沿った治療が行われない場合も存在し、そのGapを評価する意味で「Evidence-practice Gap(Ep Gap)」という考え方が提唱されるようになりました。その施設のEp Gapを知ることで、実際行われている医療のEBMへの準拠の程度が明らかになります。Ep Gapを調べるためには、標準医療が実践されている度合いを数値で表す必要があります。その一つ一つの数値項目を臨床指標(QI)といいます。
医療者は、「常に最新で根拠のある医療情報を学会や論文などから入手することを怠らず日々の診療にその知識を投入すること」を義務づけられています。医療者が当院の「医療の質」の程度を知り医療の改善に役立てていくことを目的に、QIをもとに当院の「医療の質」を評価しその結果をここに公表します。QIの結果は、経年的な1病院の評価にのみ評価可能です。つまり、各病院のそれぞれの特性や背景、役割が異なるために病院間の評価に用いることには適していません。したがって、公開は当院のみの指標となります。
本事業により、当院における「医療の質」の程度が具体的に明確化され、それを各人が認識することにより、今後の医療の向上に役立てていただければ幸いです。
<参考文献>
1)2009年厚生労働省科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「医療の質向上に資するアウトカム評価に関する研究」(研究代表者;福井次矢),2010年5月.
2)Lohr KN,Medicine:A strategy for quality assurance Vols I and II,Washington DC:National Academy Press,1990.
3)福井次矢,Quality Indicator 2011 聖路加病院の先端的試み「医療の質」を測り改善する 東京:インターメディカ,2011.